いよいよ始まるカルロス・ゴーンの裁判
日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告の元側近で、同被告の報酬隠しに関与したとして金融商品取引法違反罪に問われた同社元代表取締役グレッグ・ケリー被告の初公判が15日、東京地裁でいよいよ開かれます。
- ケリー被告の罪状は?
- 本件裁判でカギを握る人物がいる
- カルロス・ゴーンだけではなかった
1. ケリー被告の罪状は?
ケリー被告は、報酬1億円以上の役員の名前や金額の開示が義務化された2010年以降、高額報酬が批判されることを恐れ、ゴーン被告と共謀して、一部を退任後などに受け取る「未払い報酬」とすることで、報酬を表面上、半分程度に圧縮し、10~17年度の報酬総額を約91億円少なく見せ掛けて各年度の有価証券報告書に虚偽記載したとされています。ケリー被告の裁判は、あくまでも氷山の一角でゴーン被告の罪、そして日産の他の役員の罪が暴かれるかがポイントとなりそうです。
2. 本件裁判でカギを握る人物がいる
本件裁判で、注目したいのは、ハリ・ナダ氏。現在専務執行役員となっています。
マレーシア出身のナダ氏は英国で育ち、グレイ法曹院で学び法廷弁護士の資格を持ち、文部省(現文部科学省)奨学生として中央大学で学んでいたこともあるようです。
1990年に日産に入社し、英国勤務の後、日本の日産本社で約4年間勤務し、2012年に欧州で勤務後、積極的な管理手法が、人事や法務などを担当していたケリー被告の目に留まり、ナダ氏はケリー被告の業務の一部を引き継ぎ、法務やコンプライアンスなどを担当するようになったようです。
ナダ氏は、日産とアライアンス企業のコンピューターシステムに侵入するため、ウェーブストーンという仏企業を起用し、ハッキングし、ゴーン被告のメールを入手したとされています。その後、元社長の西川氏とナダ氏は、日本政府は日産が持ち株会社に飲み込まれるのを見たくはないだろうと考え、日産はゴーン被告の報酬体系に関する情報を東京地検と共有。ナダ氏は司法取引をしたようです。
このナダ氏が、裁判で証人喚問で証言をする予定です。何を語るのかみものです。
また、ゴーン被告の逃亡を手助けしたアメリカ人の元軍人2人もアメリカの裁判所が身柄引き渡しを認めたとしています。彼らがもし、裁判に出廷するようなことがあれば新たな事実が出てくるかもしれません。
3. カルロス・ゴーンだけではなかった
日産は当初から、ゴーン被告とケリー被告の不正行為のみが2人の解任につながったと主張していましたが、その後の調査と暴露で下記が判明しています。
逮捕の1カ月後に保釈されたケリー被告は、インタビューで、西川元社長も株価連動型役員報酬制度で権利の行使日を変更し、約4700万円を上乗せして受け取っていたと指摘しています。また、西川元社長は、ゴーン被告の報酬の状況について十分に認識していたとも述べています。更に内部調査で、ナダ氏自身も株価連動型報酬を上乗せして受け取っていたことが発覚しています。結局、上層部によるグルになっての会社私物化の様子が伺え、裁判で泥沼の暴露合戦になることも想定されます。
日産は、倒産寸前からよみがえり、栄光を手にした後、再び地に落ちてしまいました。この映画にも出来そうなドタバタ劇から目が離せません。しかしながら一方で、まじめに働いていた社員や工場労働者の人達は、気の毒だなと思います。