菅政権と日産自動車
菅首相は、長官時代にインタビューで、自らの経済政策として中小企業や地方銀行などでのM&Aを積極的に推進する方針を明らかにしています。菅政権となった今、国内企業は、再編ラッシュとなるのでしょうか?
1. 日産自動車の再編?
2. ホンダとの経営統合?
3. 目の離せない日産自動車
1.日産自動車の再編
日産自動車は、中小企業ではありませんが、自動車業界のピラミッド構造により、無数の部品を供給する中小企業がぶら下がっています。中小企業の再編には時間が掛かりますが、ピラミッドの頂点の日産自動車を再編すれば、おのずと傘下の中小企業が再編する可能性があります。
また、日産自動車は、経営危機の真っ只中にあり、親会社のルノーからいつ手を切られるか分からない状態にあります。そこで日産自動車の救済を実現し、菅政権の経済政策をアピールすることも考えられます。日産自動車の経営危機については、下記を参照願います。
更に菅首相が地盤とする神奈川2区には、日産自動車のグローバル本社があります。横浜市の林文子市長は、販売会社であるが元日産自動車の役員であることから考えると、菅首相と日産自動車の関係は深いものがあると想定されます。
その一つとして、日産自動車は、今年5月から7月にかけて約8,900億円を資金調達しています。このうち政府系金融機関の日本政策投資銀行から1,800億円借り入れ、そのうち1,300億円に政府保証が付いたのが証拠かもしれません。
2.ホンダとの経営統合?
先日、フィナンシャル・タイムズが報じた「日産とホンダの経営統合」が報じられました。日本政府関係者が昨年末に日産自動車とホンダの経営統合を模索していたという内容でした。統合案は2019年末に政府関係者から両社へ提案され、ホンダは日産自動車とルノーとの複雑な資本関係を理由に反対。日産自動車も日仏連合の再建を軌道に乗せることに注力していると拒否し、立ち消えになったとされています。
ホンダとの経営統合を大きく阻む要因は、日産自動車の最大の株主は、ルノーであり43%を保有しています。簡単に言うと日産自動車は、フランス企業なのです。ここにホンダが参加するとなると、ホンダもフランス企業となってしまうの?という懸念が出てきます。まずは、日産自動車がルノーとの提携を解消し、日本政府がルノーの持ち分を買い取るなどの政策が必要となります。その後、初めて国内の他の自動車メーカーとの経営統合の検討が出来るという形になるでしょう。
しかしながら、2020年7月30日に発表したルノーの決算発表では、1−6月期の純損益は72億9000万ユーロ(約9,000億円)の巨額赤字となっています。コロナウイルスの影響による自動車販売の落ち込みに加え、子会社である日産自動車の業績不振が足を引っ張った形となっています。実にルノーが計上した巨額赤字の約3分の2を占める48億ユーロ(約5,950億円)が、日産自動車による赤字となっています。ルノーが、日産自動車の回復の見込みが難しいと判断すれば、中国の自動車メーカーなど、他に売却される可能性もありますので、救済するつもりがあるのであれば、日本政府にとっては、今年の12月がリミットとなるかもしれません。
3.目の離せない日産自動車
前社長のカルロス・ゴーン関連の裁判も開始しました。また、日産自動車は、国内からの資金調達はこれ以上無理と判断し、ドル建てで80億ドル、ユーロ建てで20億ドル、総額約1兆円を超える社債を発行しました。利回りが、4.81%となっていますので、年間400億円もの金利負担が発生することになります。
車販売の急速回復が見込めない中で、資産の売却等を今後行っていくことが想定され、綱渡りの経営が想定されます。1年前には、800円近くあった株価も現在は、380円台まで下がっています。政府が助けるのかによって株価も大きく動くと思われますので、日産自動車の動向から目が離せません。