新型コロナウィルスワクチンの接種順番に異変
皆さんも既にご存知の通り、欧米では新型コロナウィルスワクチンの接種が開始されました。アジアでは、シンガポールが一番初めになるかと思います。
どの国も最初の接種は、医療従事者、そして高齢者の順番としていますが、インドネシア政府は、これに反して働き盛りである18歳から59歳までを対象とすると発表しています。
1. インドネシアのコロナの状況
インドネシアは、人口約2億6千万人で中国、インド、アメリカに続く世界第４位の人口となります。人口は、増加しており、2035年には人口が３億人になるといわれています。人口ピラミッドも30歳以下が全体の45%を占める結果となっています。
また所謂、労働年齢といわれている15歳から64歳までは、人口の約67%、1億7千万人となっています。
一方で新型コロナウィルスの感染状況ですが、アジアでは一番感染者が多く、未だに一日8千人の新規感染者が発生し、累計でも80万人が目前に迫っており、死者も2万人を超えています。
2. インドネシアで利用されるワクチン
インドネシアでは、2021年1月13日からまずはジャカルタでワクチンの接種が開始される予定です。初めに利用されるワクチンは、中国製のSinovac Biotechのものとなります。3百万回分が既にインドネシアに到着しており、医療従事者が摂取する予定です。インドネシアは、中国製の他に欧米製のPfizerとAstraZenecaからも供給を予定していますが、AstraZenecaは早くて2021年6月頃、Pfizerに至っては2021年9月頃を予定しており、時間が掛かる見込みです。
3. ワクチン接種順番を変更した理由
インドネシア政府は、18歳から59歳までの労働年齢層を対象とした理由について、中国製のSinovac Biotechのワクチンは、高齢者に対する影響が未知数であるためとしています。Sinovac Biotechのワクチンは、ブラジルやトルコでも臨床試験が行われていますので、もしブラジルやトルコが、中国製のワクチンに対して同様の対応を取るのであれば、高齢者に対する影響があるのは、本当かと思います。しかしながら他の事情も見え隠れします。
①ワクチン発注量
左記にも書きましたが、インドネシアの人口は約2億6千万人で日本の2倍以上です。しかしながらワクチンの発注量を見ると日本よりも低いのが実態です。
インドネシア政府は、集団免疫を形成することを目的としているようで人口の67％を対象とした場合でも約4億3千万回分のワクチンが必要となり、未だ半分に満たない状況となっています。ワクチン接種は、無料としていますので、ワクチン購入のお金の問題と人口の多い国に起こりうるワクチンの確保が影響しているかもしれません。
②政府の批判をかわす狙い
インドネシアの新型コロナウィルス対策は、後手に回りました。最初の感染者が2020年3月2日に確認され、遅かったこともあり、その後感染者が増加しても自治体ベースのお願い対応で、政府は何もしませんでした。実際、半数以上が政府の対応に不満と回答しています。人口の多い、労働年齢層を対象とすることで政府への批判をかわす狙いがあるかもしれません。
③経済を優先
インドネシアの経済は、盤石ではなく、以前外国からの資本に依存している状況が続いています。労働年齢層にワクチンを供給することで、経済に対するダメージを最小限にとどめ、速く回復させることを目的としていると考えられます。実際、若い人は行動が活発なので、この方法はある意味理解できる部分があり、他の国の指針になるかもしれません。
④ハラルの問題
インドネシアの人々は、大半がイスラム教です。イスラム教の国では、新型コロナウィルスワクチンが、ハラルに準拠しているかが問題となっているようです。実際、インドネシアの国民の35%がワクチンを接種しないと回答しているようです。高齢者は、敬虔なイスラム教徒が多いと想定されるため、柔軟な考えを持つ若い人から接種するというのも一理あるかと思います。
新型コロナワクチンは「ハラル」か 東南アジアのイスラム教国で議論 - 産経ニュース
新型コロナウィルスのワクチンが効くことを祈ります。感染の拡大が止まらないアメリカでは、病院が一杯のため、助かる見込みのない人は救急車を呼んでも病院に運ばない事態となっています。こうなってくるともう戦時中といっても過言ではないかと思います。野生の動物の世界を考えた場合、力のないものが滅びるのは自然の摂理なのですが、果たして人間もそうなってしまうのでしょうか.......
