ミャンマーからの外国企業の撤退が止まらない
2月14日にキリンホールディングスは、ミャンマー市場から撤退すると発表しました。今後の成長が見込める有望市場と位置づけてきましたが、軍事政権によるクーデターで人権問題への批判が強まり、事業を続けるのは得策ではないと判断したようです。
キリンホールディングスは、国軍系企業と合弁で、「ミャンマー・ブルワリー(MBL)」と「マンダレー・ブルワリー(MDL)」のビール・飲料2社を運営していましたが、いずれも保有株を6月までに売却する方針だそうです。
今回は、外国企業におけるミャンマーの状況を見てみたいと思います。
1. トヨタ自動車
2021年2月に新工場を稼働させる予定でしたが、稼働を中止しているようです。
2. 丸紅
フランスの大手電力会社のDEFと水力発電のダムを作る予定でしたが、プロジェクトは、凍結となっています。
3. TotalEnergies(フランス)とChevron(アメリカ)
石油大手の2社は、国軍系企業とガスの開発で提携していましたが、提携解消を発表しています。Totalは、
4. Woodside(オーストラリア)
採掘をメインとしていたオーストラリアの石油会社も提携解消の予定となっています。
5, Evergreen Marine(台湾)
海運大手も軍事政権が管理する港に船を着岸させないと発表しています。
6. British American Tobacco(イギリス)
過去には、100,000人を雇用していましたが、既に撤退しています。
7. Voltalia(フランス)
再生可能エネルギーの会社ですが、既に撤退しています。
8. Benetton(イタリア)
軍事政権になって以降、新たな発注は停止しているようです。
9. Carlsberg(デンマーク)
ビール会社ですが、生産を減らしているようです。450人の従業員を抱えており、まだ撤退は、表明していません。
人権問題に敏感な欧米企業が撤退等を検討する中で、スズキ自動車については、一旦生産を停止したものの再開しています。またフランス系ホテルのAccor groupは、ミャンマーに9つのホテルを所有しており、従業員1,000人以上を抱えているため、彼らをサポートしたいと表明しています。
●外国企業撤退における影響
1. 国軍系企業の収入減少
外国企業が撤退すると、提携していた国軍系企業の収入及びミャンマー政府の収入が減ります。Totalは、2019年と2020年でUSD400百万以上を支払っていたようなので、この分が丸々無くなるということになります。
2. 失業者の増加
一般市民にとって大きいのは、失業ではないでしょうか。外国企業は、工場などを運営しており、大量の従業員を雇用していますので、撤退してしまいますと失業者が増えるということになります。
ミャンマーは、平均年齢が27歳ですし、人口も5千万人を超えていますので、長期的には有望な市場だと思います。軍事政権の展望が中々見えないので、企業はこれからも難しい選択を迫られるかもしれません。